条文テーマ: 定款・役員の任期(会社法第332条)
対象: 株式会社・合同会社の設立準備中の方、定款作成中の方
1. 条文の基本知識:取締役の任期とは?
会社法上、株式会社の取締役の任期は原則として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と定められています(会社法第332条第1項)。
ただし、すべての株式に譲渡制限がついている「非公開会社(多くの中小企業・ベンチャー企業)」は、定款に定めることで任期を「最長10年」まで伸ばすことが可能です(同条第2項)。
【定款の文言サンプル】
(取締役の任期)
第〇条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち
最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2. 【徹底比較】「10年」vs「1〜2年」どっちを選ぶ?
パターンA:「任期10年」を選ぶべきケース
- 自分1人だけで起業する(1人社長・100%株主)
- 役員が自分と配偶者(または絶対の信頼関係がある親子)のみ
✅ メリット:
- 重任登記の費用を大幅にカットできる
通常、2年ごとに役員変更(重任)登記が必要となり、その都度登録免許税(資本金1億円以下で1万円、1億円超で3万円)+司法書士報酬(約2〜3万円)=合計3〜4万円がかかります。10年にすれば、この費用が10年に1回で済みます。 - 登記の手間と「みなし解散・過料」のリスクが減る
登記を忘れ放置すると、法務局から「12年間登記がない会社は解散したものとみなす(みなし解散)」処分を受けたり、裁判所から数万〜数十万円の過料(ペナルティ)を請求されたりします。任期を長くすることで毎回の事務作業から解放されます。
パターンB:「任期1〜2年」を選ぶべきケース
- 共同創業者や友人、知人を役員に入れる
- 将来的に外部の人間(役員・CxO)を招聘する予定がある
- ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から出資を受ける
⚠️ 10年にしてはいけない最大の理由(解任損害賠償の罠):
役員を任期途中で解任する場合、株主総会の決議があれば解任自体は可能です。
しかし、会社法第339条第2項には「正当な理由がない解任の場合、会社は解任された取締役に対して残りの任期分の役員報酬を損害賠償として支払わなければならない」と規定されています。
実例の悲劇:
「任期10年・月額報酬50万円」で知人を役員にしたが、2年目でまったく働かなくなったため解任した。
➔ 残り任期8年分(96ヶ月 × 50万円 = 4,800万円)の損害賠償を請求され、会社が倒産危機に…!
任期を「1年」または「2年」にしておけば、任期満了時に「再任しない(不信任)」とするだけで、1円の損害賠償も発生せずに円満に役員を交代させることができます。
3. 合同会社(LLC)の場合はどうなる?
合同会社を検討している方にとって、ここは最大の注目ポイントです。
結論:合同会社には「役員の任期」自体が存在しない!
会社法上、合同会社の「業務執行社員」や「代表社員」には、任期の定めが一切ありません(無期限)。
- 株式会社: 定款で任期を最長10年まで延ばせるが、10年経ったら必ず重任登記(改選)が必要。
- 合同会社: 死亡・辞任・除名等がない限り、一生涯そのまま役員であり続けるため、定期的な重任登記が完全不要!
定款の書き方の違い
- 株式会社の定款:
必ず任期規定を置く(「選任後〇年以内…」)。記載がない場合は法定の「2年」になる。 - 合同会社の定款:
任期に関する条項は「規定不要(書かなくてよい)」。もちろん定款で「任期は2年とする」と独自に縛ることも可能ですが、実務上は無期限にするのが一般的です。
4. プロが教える「定款記載のベストプラクティス」
| 会社形態・組織形態 | おすすめの任期設計 | 定款の文言 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 株式会社(1人起業・完全家族経営) | 10年 | 「選任後10年以内に終了する…」 | コスト削減を最大化するため |
| 株式会社(友人・共同創業・複数役員) | 1年 または 2年 | 「選任後1年(2年)以内に終了する…」 | トラブル時のリスクヘッジ最優先 |
| 株式会社(将来役員が増える予定) | とりあえず10年 ➔ 増やす際に定款変更 | 最初は10年で登記 | 1人起業時は費用を抑え、役員加入時に株主総会で定款変更して短縮 |
| 合同会社(すべて) | 規定なし(無期限) | (記載なし) | 登記費用ゼロ・更新作業ゼロの恩恵をフル享受 |