条文テーマ: 会社法第174条(相続人等に対する売渡しの請求)
ひなた
『相続人に対する株式売渡請求』って何ですか?株主が亡くなったときに、会社がその遺族から株を買い取れるってことでしょうか?そんなことして遺族に怒られませんか?
源さん
怒られるどころか、これを定款に入れておかないと会社が潰れるぞ!株主が亡くなって、経営に全く関心のない遺族や仲の悪い親戚に株が相続されたら、株主総会で文句ばかり言われて会社が身動き取れなくなるんだ!
真壁
源さんの言う通り、事業承継の現場で最も恐れられているトラブルです。株式は『相続』によって譲渡制限をすり抜けて分散してしまいます。それを防ぐ特約の仕組みと、合同会社での驚くべき違いを解説します!
1. 定款の文言サンプルと売渡請求の仕組み
株式の譲渡制限条項があっても、「相続や合併(一般承継)」による株式の取得には譲渡制限が効きません。
そのため、定款に会社法第174条に基づく「売渡請求条項」を入れておく必要があります。
【定款の文言サンプル】
(相続人等に対する売渡しの請求)
第〇条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、
当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
売渡請求の流れ
- 株主が死亡し、遺族(相続人)が株式を取得する。
- 会社は、相続を知った日から1年以内に株主総会の特別決議を開催。
- 会社から相続人に対して「その株を会社に適正価格で売り渡してください」と請求する。
- 相続人はこの請求を拒否できず、会社に株を売却しなければならない。
2. 【選択基準】この条文を入れるべきか?入れないべきか?
入れるべきケース(★ほぼすべての中小企業に推奨)
- 共同経営者や従業員、知人に株を持たせる場合
- 特定の親族以外に会社の経営権を渡したくない場合
メリット:
経営に関係のない相続人(面識のない後妻の子や疎遠な親族など)に株が渡り、株主提案権や帳簿閲覧権を乱用されて経営が妨害される事態を完全に防ぐことができます。
入れない方がよい例外的なケース
- 自己資金(分配可能額)がまったくない会社
会社が株を買い取るには、会社の剰余金(分配可能額)の範囲内で買い取り資金を支払う必要があります。 - 後継者が定まっておらず、相続人自身に会社を継がせたい場合
3. 合同会社(LLC)の場合はどうなる?
合同会社の場合、法律のデフォルトルールが株式会社と180度逆になっています!
衝撃の事実:合同会社は定款に特約がないと、相続人は社員になれない!
会社法第607条第1項第3号により、合同会社の社員が死亡した場合、その社員は当然に「退社(脱退)」したものとみなされます。
- 特約がない場合:
相続人は社員(役員)としての地位を引き継げず、出資金に相当するお金(持分の払戻し)を受け取る権利しか得られません。 - もし社長が1人で、定款に何の手当てもしていなかったら:
社長が死亡した瞬間に「社員が0名」となり、会社が法律上当然に解散・消滅の危機に瀕してしまいます!
ℹ️ 重要:
合同会社で家族や後継者に会社を引き継がせたい場合は、定款に「社員が死亡したときは、その相続人が持分を承継して社員となることができる」という特約条項を必ず明記しておかなければなりません。
ひなた
株式会社では『買い取れる条文』を入れて会社を守り、合同会社では『相続できる条文』を入れないと会社が消滅しちゃうんですね…!正反対のルールにびっくりです!
真壁
法律の違いがこれほど鮮明に出る条項はありません。株式会社を作るなら売渡請求を入れておけば万全です!